不動産鑑定士とは
「不動産鑑定士×〇〇」は自分らしく生きるライセンス
都市再生推進法人・一般社団法人の事業執行責任者を兼務
日本各地の複合施設再開発業務を担う
ご経歴とこれまで手がけてきたお仕事を教えてください。
大学卒業後、総合ディベロッパーに入社しました。これまでに複合施設再開発業務、日本各地の流動化物件開発やコンサルティング業務を担当しました。ディベロッパーとして経験を積むうちに施設の資産評価や投資採算の知識が必要と感じ、不動産鑑定士の資格を取得しました。
まちづくり×価値評価。まちづくりに不動産鑑定士の知見が活かせる
現在はどのようなお仕事をされておられますか?
今は大手町・丸の内・有楽町エリアのエリアマネジメントや社会課題解決型の新規事業を行っています。開発企画や運営時における収支計画・投資採算の分析などに、不動産鑑定士の知見が役立っていると感じています。
人が集い、多様な活動が出来る街をつくる。
仕事において、やりがいや醍醐味を感じるのはどんな時ですか?
オフィスビル・マンション・商業開発といったハード面の開発事業に加えて、通りや公園の整備、社会実験、ビジネス支援サービスといったソフト面のまちづくり事業も担当しています。その為、人々の多様な活動をお手伝いできる、社会的意義の高い仕事だと思っています。
人々が活動しやすいまちづくりに寄与できることに、大きなやりがいを感じています。
「鑑定評価の3手法」の応用で、より説得力のある提案ができる
不動産鑑定士の専門知識はどのように役立っているとお感じですか?
我々ディベロッパーや行政には、広範囲のまちづくりを完成させた後にまち全体にどの程度の付加価値(プレミアム価値)が生まれたのかを数字で把握したいという課題感があります。この「まちづくりのプレミアム価値」も不動産鑑定士なら鑑定評価の「環境条件(優れた環境、街並みや景観、ブランドなど)」を抽出してロジカルに説明することができます。
また今迄にない新規事業を企画する場合も、特に収益性の検証において「原価法・比準法・収益法」という鑑定評価3手法を応用することで、蓋然性の高い検証を行うことができると感じています。
「ディベロッパー×資産評価」でキャリアに深みを
2つの専門性を持つことで、より付加価値の高いキャリアアップを目指せるのですね。
はい、そう思います。私の場合は「ディベロッパー × 不動産鑑定士」というふたつの専門性を持つことで、仕事のスキル向上にも人間力を磨く上でもよい影響があると実感しています。
具体的に言うと、ディベロッパーという仕事には、まちづくりの最前線で現物の開発・運営・売買等をリアルに体験できる面白みがあります。再開発手法・造成等の開発行為、地盤強化、土壌汚染対応、埋蔵文化財調査、埋設物調査、権利変換、地権者間調整、管理組合組成等の実務は、鑑定評価をする上で必要な知識です。
一方、不動産鑑定士は多様な不動産の資産価値をロジカルで体系的に算出する専門職です。従って収益性や資産価値、将来予測等をマクロ的・体系的に説明するスキルが身につきます。
この2つの異なる専門性は大きな相乗効果があると感じています。
また二つの業界にはそれぞれ特徴があり、属する人々の魅力の傾向も大きくことなります。二つの世界に属することで自分の人脈や価値観の幅が広がりました。
不動産鑑定士の資格は自分らしく生きるための“お守り”
不動産鑑定士の資格は大谷さんの人生にとっても大切な礎になっているのですね。
私にとって不動産鑑定士の資格は自分らしく生きるための“お守り”です。
ちょうど管理職になる頃に心臓病を患い、体が動かなくなりました。チームワークが重視される職場で長時間働くことが難しくなり、「家族を守れないかもしれない」という不安で押し潰されそうになりました。
そんな時、私を救ってくれたのが不動産鑑定士の資格でした。専門職業家の鑑定士は自分で仕事の進め方を決める裁量が大きく、柔軟な働き方が可能です。そのような働き方ができたからこそ、私は心臓病を克服し、家族と自分自身を守ることができました。
今でも、不動産鑑定士という資格と、支えてくれた仲間たちに心から感謝しています。
人々の活動の幅を広げられるまちづくりを
今後チャレンジしたいことなどはありますか?
近年は、人口減少・建設費高騰に伴い、コンパクトで環境配慮型のまちづくりが求められています。新たな建物を開発する“ハードのまちづくり”だけでなく、古き良い建物をリノベーションして使い続け、人々の活動と生活を支援する“ソフトのまちづくり”にも深く携わっていきたいと思います。
その中でも次世代を担う若者・子供達向けのサービスに関わりたいですね。
いまは働き方が多様化していて、まちの中でも多様な人々が多様な働き方をしています。子ども達には自分に合った働き方・キャリアを早い時期に見つけ、それに向かって10代後半から20代前半を過ごしてもらいたい。最近では進路の選択を迫られる中高生向けに「多様な働き方を知るまちづくりツアー」をトライアルで開催したところ好評だったので、現在は定期開催に向けた準備をしています。
「鑑定士×〇〇」で自分らしい働き方と生き方を

不動産鑑定士を目指す方へアドバイスをお願いします。
魅力ある不動産鑑定士の資格を活かすためには、もうひとつの専門性があった方がよいと考えます。
また働き方という観点でも、「企業人としてのディベロッパー」と「独立系資格の不動産鑑定士」はどちらも魅力な職業です。
どちらかを選ぶのではなく、兼業することで専門性と安定性が増します。これから不動産鑑定士を目指す方には、ぜひ「鑑定士×〇〇」を目指してほしいと思います