不動産鑑定士とは

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地元で信頼される「不動産鑑定士」という選択

 
田仲博樹不動産鑑定事務所 代表
全国競売評価ネットワーク仙台ブロック秋田競売不動産評価事務研究会会長
令和5・6年度 一般社団法人秋田県不動産鑑定士協会会長

相続から裁判所業務まで──地域と歩む鑑定士の現在地

これまでのご経歴と、現在のお仕事を教えてください。

秋田県で最初の不動産鑑定業者にて約18年間の勤務などを経て、平成28年に地元である秋田県大仙市で独立・開業しました。
現在は地価公示、県の地価調査、市町村の固定資産税標準宅地評価、相続税標準地評価、公共用地取得のための評価、裁判所の不動産競売評価など公的評価を中心に業務を行っています。
近年は相続に伴う個人からの依頼も増えてきております。

令和6年から秋田士協会では、県からの要請で、自治体職員を対象に住家被害認定調査の実地研修を担当しております。令和7年は連合会60周年に関連して不動産の無料相談会を県内13市全てで開催。大勢の方にお越しいただきました。
裁判所の調停委員、司法委員、鑑定委員も務めております。当事者の和解や紛争解決に繋がった時は、鑑定士をしていて良かったと実感します。

 

「不動産+人間性」人の想いも汲み取る仕事

地方都市において、不動産鑑定士はどのように必要とされていると感じますか?

誤解を恐れずに言うならば、不動産鑑定というのは、本来そこに暮らしている鑑定士がやるべきであると私は考えています。

不動産鑑定評価基準の第1章「不動産の鑑定評価に関する基本的考察」に書かれていますが、不動産の価格(賃料)は、「通常、過去と将来とににわたる長期的な考慮の下に形成される。したがって、不動産の価格(賃料)は、昨日の展開であり、明日を反映するものであって常に変化の過程にある」ものです。
こうしたことから、地域に根差した鑑定士こそ、評価額に反映させる精度が高いのではないかと思うのです。

鑑定評価の対象は「不動産」ですが、それぞれの不動産に関わる「人」の気持ちや想いが大切です。仕事を通じての「人」との出会いやつながりに感謝し、これからも私の鑑定評価書を書いていきたいと思っています。

 

自らの意志で選び、信頼で評価を築く

不動産鑑定士という仕事の魅力はどこにあると思われますか?

判例などに大きく捉われることなく、自分の判断や意見に基づいて評価額を決定できることです。忙しい時期はイライラしたり、悩んだりの繰り返しですが、自分の意志で鑑定士を目指し、幸いなることができ、生活に足る充分な報酬を得ることができている日々を幸せに感じています。

また、日常の業務において、鑑定士は社会の信頼度が高いことを実感する機会が非常に多いです。もちろん、責任が大きい分、依頼や相談を受けた際は、いい加減なことは言えません。自分が発する言葉や文章にはつねに細心の注意を払っています。


 

評価額に基づいた損害請求 信頼に応える鑑定士の矜持

これまで手がけたお仕事のなかで印象に残っているお仕事を教えてください。

事故物件になってしまったアパートの鑑定依頼を受けた時のことが印象に残っています。事件後リフォームされ、見た目はきれいになりましたが、「噂が広がって家賃を下げても入居者が見つからない」と、オーナーさまより不動産鑑定の依頼がありました。事件が起きなかった場合の不動産価値と事件後の不動産価値を知り、損害賠償を請求したいとのことでした。

幸い、私の鑑定評価書に基づいて算定した損害賠償額を請求できたそうで、後日感謝の言葉をいただきました。月並みですが、「鑑定評価を依頼して良かった」と言ってもらえたり、同じ依頼者からまた別のご依頼をいただいたりすると、真摯に取り組んでいて良かったと実感します。

 

片道1時間の通勤がゼロに 独立後の充実した時間術

不動産鑑定士として独立開業されたメリットをどうお考えですか?

開業するまでは、約18年間、片道約1時間かけて車で通勤していました。秋田の冬は積雪があります。朝の渋滞が嫌なので、当時は朝5時30分に家を出発する生活でした。独立・開業し、片道約1時間の通勤時間を自由に使えるようになったのは大きいと感じています。

朝早いのは全く苦ではないので、今でも平日は6時30分頃には事務所に着き、仕事を始めています。朝が早い分、夕方頃になると集中力が欠けてきますので、その時間からは同業の鑑定士さんに連絡を入れて情報交換したり、地元の付き合いのある方や同級生と飲みに行ったりするなど交流を深めています。

 

野球観戦と読書三昧 心を満たす休日の二本柱

お休みの日は何をされていますか?

子供が2人とも野球をしていた影響から、野球の試合観戦によく行きます。私は小学生の頃からずっと広島東洋カープのファンで、特に「炎のストッパー津田恒美」が大好きでした。

一方で読書も趣味。何もしなくていい休日は1~2冊の本を読み切ってしまいます。

 

次世代を担う鑑定士育成と地域貢献への挑戦

今後の夢や目標を教えてください。

業界の高齢化が進む中、特に学生の方には不動産鑑定士という職業やその魅力、やりがいを知ってもらい、一人でも多くの方に資格を取得し、秋田で活躍して欲しいと願っています。
昨年は地元の国立大学と私立大学に「応援ノート」を配布させてもらいました。今後は既に実践されている他の士協会さんを参考にしながら、寄附講座の開催実現に向けて動きたいと考えています。
連合会広報委員の一人としては、内部広報・外部広報の両面から、それぞれできること、やりたいことを今一度整理し、行動に移したいと考えています。

地元に根差した不動産鑑定士として、鑑定評価が社会に必要とされる限り、専門職業家としての責任をこれからも果たしていきたいと思っています。
そして「不動産のことで困ったらまず不動産鑑定士に相談」という風潮を、もっと広めていきたいです。


諦めなければ夢は叶う」一歩一歩の積み重ねを信じて

不動産鑑定士を目指す方へアドバイスをお願いします。

「諦めなければ夢は必ず叶う」。私がそうでした。鑑定士を目指そうと覚悟を決めたなら、ぜひ鑑定士になるまで頑張って欲しいと思います。

もちろん、鑑定士になるまではとても大変な道のりです。私自身も経験しましたが、働きながら不動産鑑定士の試験に合格することや、その後の実務修習や修了考査を受けることは並大抵のことではありません。

そこで受験生時代から現在も私が心がけているのは、「ABC理論(A)当たり前のことを(B)馬鹿にしないで(C)ちゃんとやる」ということです。

これは受験だけでなく、不動産鑑定士として業務を行う上でも非常に重要です。鑑定評価は資料の収集、価格形成要因の分析、現地・役所調査など、ひとつとして省略できる作業はありません。どこかで手を抜くと、依頼者に見透かされ、自分が導き出す評価額の精度に影響してくると思っています。

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