不動産鑑定士とは
仕事も人生も楽しみ尽くすための「鑑定士」という最強の武器
中小企業診断士、宅地建物取引士
ヤンキー漫画から鑑定士へ 自分を変えた鑑定士への挑戦
不動産鑑定士を目指したきっかけを教えてください。
まじめな優等生でしたが、中2の時にヤンキー漫画にハマり、テストで良い点数を取ることをカッコ悪いと思うように…。浪人して大学に入りましたが、ほぼ出席せずに半年で中退し、ピザの配達バイトをしながらスロット、麻雀三昧の日々を送っていました。
しかし彼女ができ、「このままではいけない」と一念発起。高卒でも受験できる公務員試験に挑戦しましたが、面接にて不合格。そこで、高卒でも就職できると聞いた不動産会社に就職し、勉強の機会をいただいて一発で宅地建物取引士の資格試験に合格しました。
勉強を教えてくださった方が不動産鑑定士だったのですが、いずれ独立するとお聞きしたのが強く印象に残り、自分も目指してみようと考えるようになりました。
仕事の傍ら通信教育で勉強して試験に挑みましたが1〜2点足りず不合格。試験に専念するため仕事をやめ、1年間と期間を決めて勉強し2年目で無事合格しました。
ダブルキャリアを武器に43歳で独立
鑑定士の資格取得から独立までの経緯を教えてください。
試験に合格したのが32歳の時です。当時は就職氷河期でしたが、運良く一社から内定をいただき、鑑定士としてのキャリアをスタートさせました。
東京本社で10カ月勤務した後に名古屋支店に異動。民事再生やM&A案件でコンサルティング会社とご一緒させていただく機会が増えたことから、鑑定と経営コンサルティングができたらもっと仕事の幅が広がると考え、中小企業診断士の資格も取得。ダブルライセンスを生かして独立を考えましたが、東京本社に異動になり、尊敬する上司のために4年半会社に残りました。
その後、43歳の2023年6月に会社を設立。会社を円満退職し、9月に開業しました。
自由な働き方と挑戦を求めて独立を選択
なぜ独立・開業に踏み切ったのですか?
仕事とプライベートの垣根を壊し、もっと自由に生きたかったからです。不動産鑑定士は、比較的容易に独立が可能です。開業資金はほとんどかからず、公的な仕事も一定程度見込めます。
会社員時代は安定した休日と給料が保証されていましたが、お客様のためにしたいことが時にはできず、自分のためにしたいことはもっとできない…という悩みもありました。独立後は仕事とプライベートの垣根がないので、自由にいろいろな仕事に携わることができています。
ただし、会社所属であれば、高い給料と比較的自由な労働環境が得られます。会社という冠があることで、特殊な不動産の評価に関わったり、チームで働く醍醐味を味わえたりするメリットもあります。
私も開業後は、以前勤務していた会社からの委託業務で個人事務所ではなかなか請け負うことができないホテルやゴルフ場など大企業の不動産評価に携わらせていただいています。鑑定士として良い経験を積ませてもらっていると感謝しています。
価値を見極め、人生を支える不動産鑑定士の使命
鑑定士の魅力、やりがいは何だとお考えですか?
お客様によってニーズは様々ですが、鑑定士はお客様の人生を良い方向に変える仕事だと思っています。依頼を受けた時はいつも不動産鑑定士としての誇りを胸に最大限お客様に寄り添うことを心がけていますが、鑑定評価で喜んでいただけた時は大きなやりがいを感じます。
また、鑑定評価には不動産の確認が伴います。とはいえ、不動産は“不動”ですから、実際に見て回るためにはこちらから出向かなければなりません。日本全国を見てまわることができるので、あちこち出かけるのが好きな方にとっては、最適な仕事といえます。日本ってやっぱり素晴らしい国、って思います。
ちなみに、私の過去最高評価額は4,300億円!仕事ついでに高級ホテルに宿泊してゴルフプレイや温泉も堪能しています。
唯一無二の専門資格 不動産鑑定士の存在感と可能性
鑑定士の強みは何だとお考えですか?
不動産鑑定士は、「文系三大国家資格」といわれています。他士業に比べて希少種なので、仕事でもプライベートでも、「不動産鑑定士です」というと、最初はハテナ?となりますが、どんなときに役に立つのかや、その魅力をお伝えすると帰るころには覚えていただけることが多いと感じます。
不動産鑑定評価は不動産鑑定士の資格がなければできない仕事なので、将来的に独立を考えている方にとっては非常に大きな武器になる資格だと思います。
仕事も人も土地にも丁寧に 鑑定士としてのモットー
仕事のモットーを教えてください。
「不動産鑑定士はすぐには帰らない」をモットーにしています。これは、仕事で現地調査に行ったとき、仕事を終えてすぐに帰るのではなく、観光地を回ったり、温泉に入ったり、土地のものを食したりして(これを地域分析と言います)、時間ギリギリまでその土地にいるということです。
受け入れ改革とSNS活用で、鑑定士の裾野を拡大したい
今後やりたいことを教えてください。
次世代の鑑定士の担い手を確保することです。現在は実務修習生の受け入れ先に偏りがあります。各都道府県の協会単位、分科会単位で、チームで受け入れる体制や、受け入れに前向きな業者に助成金を出すなど、新しい仕組み作りを推進していきたいと考えています。
また、独立鑑定士へのサポートも力を入れたいことのひとつです。とくに地方で独立する若手の不動産鑑定士が業績を安定させられるよう支援していきたいです。そのために、YouTubeなどSNSを使い、鑑定士の広報活動にも力を入れています。
学歴に関係なく挑戦を!鑑定士は人間ドラマの宝庫

不動産鑑定士を目指す方へエールをお願いします。
試験では、家族や友人など、まわりの方の理解と応援が力になります。みんなを味方にしましょう!高卒の私が合格したのですから、これまでの学力は試験をあきらめる言い訳にはなりません。ぜひ頑張ってください。
不動産鑑定士は公共の仕事をチームでやることも多く、連携や協力が求められます。民間の仕事も密なやりとりがあれば受注増につながります。いまからコミュ力を鍛えておくこともおすすめします。
不動産鑑定、不動産鑑定士はいろいろな人間ドラマの宝庫です。漫画化、ドラマ化、映画化にもぴったり。いずれ地面師のような映像作品になるかもしれませんね。その時は私もぜひ協力させていただきたいですね。